R.WAGNER楽劇(前夜祭と3日間の舞台祭典劇)
「ニーベルングの指輪」日本初演鑑賞記
序夜「ラインの黄金」
日時:1987年10月
    「ラインの黄金」17日(土)
    「ワルキューレ」19日(月)
    「ジークフリート」22日(木)
    「神々の黄昏」25日(日)
場所:神奈川県民ホール

指揮:ヘスス・ロペス=コボス
演奏:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団および合唱団
演出:ゲッツ・フリードリヒ
ソリスト:ヴォータン;ロバート・ヘイル
     フリッカ;ウテ・ワルター
     アルベリッヒ;ゴットフリード・ホルニック
     ブリュンヒルデ;カタリーナ・リゲンツァ
     ジークフリート;ルネ・コロ
     など
     


 一言でいって,この作品は4部作なので,
4部とうして聞いて,見て評価すべきものだ
と思います。ワーグナーは連続上演をする
ために,バイロイトに専用の劇場まで作りま
したが,パトロンのルードヴィッヒ2世が,フ
ライングして「ワルキューレ」を単独上演して
しまって,ひんしゅくをかったようです。
 この作品は,簡単に言ってしまうと,クライ
マックスは2ヶ所です。1番めはジークフリート
の死および葬送行進曲,2番めはブリュンヒ
ルデの自己犠牲と終曲です。それ以外は,
クライマックスに向かっての序奏と,見ていい
のです。なにしろ,巨大な作品ですから,見
る方も,多分演奏する方も,この見通しが大
事だと思います。でないと,お互い疲れ果て
てしまいます。
 また,どんなワーグナー好きでも,寝てし
まうところがあります。「ワルキューレ」第2
幕第2場の,ヴォータンの長いモノローグと,
「神々の黄昏」第1幕第3場の,ワルトラウ
テの長いモノローグです。私も寝ました。
実は,この部分は劇の進行上,ものすごく
重要な暗示を含んでいるのですが,原語が
わからないと,生理現象はどうしようもあり
ません。
 この上演の評論を,雑誌で読みましたが,
この視点,パースペクティブ(perspective)
が欠けていたように,思います。1夜ずつ評
論しているもの,ひどいのは全部見られな
かった評論家が,評論しておりました。全部
見る暇とお金がないのなら,評論など,して
はいけないと,思います。
 以下に,個別の感想,エピソードなどを列
挙(←個別に評論しているじゃないか)します。

10月17日(土)「ラインの黄金」
 会社が午前で終わり,県民ホールヘ行く。
2階ホールで,ニーベルングの指輪初演を
記念した,ベルリン・ドイツオペラの上演の
パネル展示を見る。気分が盛り上がる。
 上演開始1時間位前に,ホールに行く。
クラッシックには珍しい,ダフ屋が出てい
てびっくりする。プログラムを買い,演奏
予定時間と,出演者変更を確認する。
また,オペラグラスを借りる。指輪のCDや,
ヘスス・コボスのCDなどが売られている。
 時間があるので,オーケストラピットを見
に行く。せまいピットに,ぎっしり大編成のオ
ケが入っている。オーケストラ編成を確認
する。弦楽は,ワーグナーの指定より1〜
2プルト位少ない編成でした。Vn.1+Vn.
2=26丁(1×14(16),2×12(16)か
?),Br.×10(12),Vc.×8(12),Cb.
×7(8)でした。()内は,ワーグナーの指
定本数。
 ホルンは横に長いピットの左端に8本,
ワーグナーチューバ持ち替え,右端にト
ロンボーンです。実は,この左右に別れ
た金管が,後に悲劇を引き起こすので
すが,それは「ワルキューレ」で,報告し
ます。

 楽譜を確認する。コンサートマスター付近
の譜面しか,角度的に見えませんでしたが,
印刷されたきれいなパート譜でした。後に,
統合される前の,東ドイツ系のベルリン国
立歌劇場の「トリスタンとイゾルデ」来日公
演を見に行った時は,手書きのパート譜で,
びっくりしました。
 コンサートマスターの楽器を確認する。黒檀
を使っていない,バロック調の,高そうな楽器
で,弦は,ガット弦に見えました。席につくと,
コンマスが,ソロで活躍するフライアの動機の
変形?が半音階で出るところ(アルベリッヒが
第3場で「黄金で征服されて,黄金が無闇に
欲しくなるんだ。」と歌うところ)を練習してい
ました。
 ホール前の,野外で記念式典が行われる。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の金管
奏者たちが,ワルハラ城のライトモチーフ
を吹奏する。駐日ドイツ大使,神奈川県知
事,ゲッツ・フリードリヒがあいさつをする。
いやがうえにも,気分は高潮する。
 PM6:30,上演開始。席は1階奥のA
席。緊張しすぎて,ちょっと気分が悪くなる。
2時間半も,休憩なしに,耐えられるか?
心配。照明が落ちて,しばしの沈黙の後,
コントラバスの変ホ音を待つ。
 腹にずしんと,響きだす。家のオーディオ
では,ノイズの中に,もやもやと聞こえた重
低音が,はっきり聞き取れる。感激。ファゴ
ットが5度上のドミナントを吹く。ちゃんと5度
上に聞こえる。家では4度下に聞こえた。つ
まり,コントラバスのもやもや音は,高調波を
聞いていたのでした。が〜〜〜ん!!!
 序奏が始まる前に,幕が開いており,黒っ
ぽいトンネル状のもののなかで,楽劇が進行
する。スモークのようなものが,たかれている。
 序奏が終わって,ラインの乙女たちと,アル
ベリッヒとの,寸劇が始まる。乙女たちは,忙
しく,スピーディーに動き回る。オペラにおける,
視覚効果を認識する。
 第2場,ワルハラ城のライトモチーフのあと,
ヴォータンはあおむけに寝て,登場。寝たまま,
ロバート・ヘイルは歌っていた。すごい。家で
は,ピエール・ブーレーズ,パトリック・シェロー
組みの,バイロイトライブ盤を聞いており,や
はりこの箇所で,声が違うのを不思議に思っ
ておりましたが,これでわかりました。
 第3場で,アルベリッヒがかえるに変身する
場面では,おもちゃっぽいかえるがぴょんぴょ
ん跳ね,おばさんぽい会場の,笑い声が起こ
る。喜劇じゃないんだから。真剣に聞いてね。
 第4場で,アルベリッヒから,指輪を奪う場面
では,手首ごと切ってしまう演出で,会場から,
またもや,おばさんぽい悲鳴が聞こえる。静か
にしてね。
 ワルハラ入場で終わる。ここでは,金管が大
音量を出して,弦楽などがどう聞こえるのか,
知りたいところでした。やっぱり,聞こえません
でした。
 拍手が沸き起こり,カーテンコールが何回も
行われました。新聞によると,30分も続いた
ようです。
 総じて,オーソドックスな,演奏だったと思い
ます。テンポも,速すぎず,遅すぎず,力みも
なく,さすが何回もワーグナー演奏を行ってい
る,本場の演奏者たちだと思いました。何しろ,
クライマックスは,まだまだ,先なのですから。
マラソンにたとえれば,最初の5kmの入り,
といったところでしょう。
 オーディオ的には,やはり生の音,特に重
低音は家では出ないと思いました。また,1階
奥は,低音の反射が良いようで,とても豊かな
低音でした。弦楽も,刺激のない自然な音で,
金管は最大では,耳がびりつく位,強烈でした。
家のシステムが低音不足なのを,改めて知ら
されました。
 
 
 
 

ラインの黄金ワルキューレ→ジークフリート→神々の黄昏
 
 
 
 
 

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